自分を責める感情に気づく練習:しんどい気持ちとの上手な付き合い方
忙しい日常で自分を責めてしまうあなたへ:感情との向き合い方
日々の生活に追われ、ふとした瞬間に「もっとこうすればよかった」「私が悪いんだ」と自分を責めてしまうことはありませんか? 家事や育児、仕事など、やらなければならないことに囲まれていると、ついつい自分のことや感情は後回しになりがちです。そして、溜まった疲れやストレスが、知らず知らずのうちに自分を責めるという形で表れてしまうことも少なくありません。
「自分を責める癖」を手放し、心穏やかに過ごすためには、自己肯定感を育むことが大切です。そして、自己肯定感を育む上で避けて通れないのが、自分の中に生まれる様々な感情、特にネガティブと感じる感情との向き合い方です。この記事では、自分を責める気持ちの背景にある感情に気づき、しんどい気持ちと上手に付き合うための具体的なステップをご紹介します。
なぜ、感情との向き合い方が自分を責めなくなることにつながるのか
私たちは皆、嬉しい、楽しいといったポジティブな感情だけでなく、悲しい、怒り、不安、悔しいといったネガティブと感じる感情も持っています。これらの感情は、私たちが何かを感じ、考え、行動するための大切なサインです。
しかし、「こんな風に感じてはいけない」「しっかりしなきゃ」と思い、ネガティブな感情を抑え込もうとすることがあります。特に、忙しい日々の中では、立ち止まって自分の感情を感じる時間を持つこと自体が難しく感じるかもしれません。
感情を抑圧し続けると、それは心の中に蓄積され、原因不明のイライラや落ち込みにつながったり、「どうせ自分はダメだ」といった自己否定的な思考を強めたりすることがあります。自分を責める癖は、こうした抑圧された感情の表れの一つとも考えられます。
感情は、ただ「感じる」ものであり、それ自体に良いも悪いもありません。感情と上手に付き合うとは、感情をなくすことではなく、感情に気づき、その存在を認め、適切な方法でそれを経験し、手放していくプロセスです。これができるようになると、感情に振り回されて自分を責めることが減り、心の状態が安定し、自分自身への信頼感、つまり自己肯定感が育まれていきます。
ステップ1:ネガティブな感情に「気づく」練習
感情との向き合い方の第一歩は、「今、自分はどんな気持ちでいるのだろう?」と、自分の感情に意識を向けることです。忙しい中で自分の感情に気づくのは難しいかもしれませんが、少しずつ練習することでできるようになります。
- 体の感覚に注意を向ける: 感情は体の感覚と密接に関わっています。肩が凝っている、胃がキリキリする、胸がザワザワするなど、体のどこかに普段と違う感覚がないか意識してみましょう。その感覚が、特定の感情と結びついていることがあります。
- 思考のパターンに気づく: 繰り返し頭の中で浮かぶ考えや、自分自身に向けられる言葉(例:「また失敗した」「どうして私はこうなんだろう」)は、その背景にある感情を示唆していることがあります。
- 感情に名前をつけてみる: 漠然とした「しんどい気持ち」を、「これは不安かもしれない」「怒りを感じているんだな」「悲しいんだ」と、具体的な言葉にしてみましょう。最初は難しくても、インターネットで「感情リスト」などを検索して参考にすると、自分の感情に合う言葉が見つけやすくなります。
一日の中で数回、立ち止まって「今、どんな気持ち?」と自分に問いかける短い時間を持つことから始めてみましょう。例えば、お茶を飲むとき、信号待ちの時間など、日常の隙間時間を活用できます。
ステップ2:感情を「受け止める」練習
感情に気づいたら、次に大切なのは、その感情を「受け止める」ことです。「こんな感情を持つべきではない」と否定したり、理由を分析しようとしたりする前に、まずは「ああ、自分は今、こんな気持ちでいるんだな」と、ありのままの感情の存在を認めてみましょう。
- 良い悪いと判断しない: 感情に「ポジティブ」「ネガティブ」といったレッテルを貼ったり、「この感情は悪いものだ」と裁いたりせず、ただ「そこにある」ものとして観察します。
- 感情の嵐の中に飛び込まない: 強い感情に襲われたとき、その感情に飲み込まれて衝動的な行動をしてしまったり、ぐるぐると考え込んでしまったりすることがあります。そうではなく、感情は体の中を通り過ぎていく波のようなものだとイメージしてみましょう。自分はその波を見ている海岸の自分であり、波そのものではない、と一歩引いて観察する練習です。
- マインドフルネスを試す: 呼吸に意識を向けたり、今行っている動作に集中したりすることで、過去の後悔や未来への不安といった感情から一旦距離を置くことができます。短い時間(1分でも)でも効果があります。
感情を受け止めることは、感情に屈することではありません。感情の存在を認めることで、感情はかえって落ち着きやすくなることがあります。
ステップ3:感情に「寄り添う」練習
感情を受け止めることができるようになったら、次に、その感情を抱えている自分自身に優しく寄り添ってみましょう。自分を責めるのではなく、親しい友人がつらい気持ちでいるときに接するように、自分自身に慈愛の心を持って接する練習です。
- 自分に優しい言葉をかける: 心の中で「しんどいね」「辛かったね」「よく頑張っているね」と、自分をねぎらう言葉や共感する言葉をかけてみましょう。頭の中で思うだけでなく、小さな声で自分に語りかけるのも効果的です。
- 安心できる場所や時間を作る: 感情が揺れているときは、一人で静かに過ごせる時間や、リラックスできる環境に身を置くことが助けになります。好きな音楽を聴く、温かい飲み物を飲む、お風呂にゆっくり浸かるなども良いでしょう。
- 信頼できる人に話してみる: 一人で抱え込まず、安心できる家族や友人に自分の気持ちを聞いてもらうのも有効な方法です。話すことで気持ちが整理されたり、受け入れられたと感じることで心が楽になったりすることがあります。(必ずしも解決策を求める必要はありません。ただ聞いてもらうだけでも十分です。)
自分自身に寄り添うことは、決して甘やかすことではありません。つらい感情を抱えている自分を認め、必要なケアをしてあげることで、心の回復力が養われます。
ステップ4:感情の「波をやり過ごす」練習
感情は常に変化するもので、永遠に続くわけではありません。強い感情も、時間とともに少しずつ和らいでいく性質を持っています。感情の波を上手にやり過ごす方法をいくつか知っておくと、感情に振り回されにくくなります。
- クールダウンの時間を取る: 感情が高ぶっているときは、その場から離れ、深呼吸をする、水を飲む、顔を洗うなど、物理的にクールダウンする時間を持ちましょう。
- 気分転換をする: 好きな香りを嗅ぐ、ストレッチをする、簡単なパズルをするなど、気分転換になる活動を取り入れることで、感情から注意をそらし、落ち着くのを助けます。
- 衝動的な行動を避ける: 感情が強いときに、勢いで何かを決めたり、誰かにきつい言葉を言ってしまったりすることがあります。一呼吸おいて、「この感情の波が過ぎるまで、行動に移すのは待とう」と意識することが大切です。
感情の波をやり過ごす練習は、感情に支配されるのではなく、感情と共存しながらも自分で自分の行動を選ぶ力を育みます。
ステップ5:感情から「学ぶ」練習
感情は、私たちに大切なメッセージを伝えています。ネガティブと感じる感情の背景には、満たされていないニーズや、大切にしている価値観が隠れていることがあります。感情から学ぶことで、自分自身への理解を深め、今後の行動のヒントを得ることができます。
- 感情の背景にあるニーズを探る: 例えば、不安を感じているなら「安心したい」というニーズ、怒りを感じているなら「尊重されたい」「現状を変えたい」といったニーズがあるのかもしれません。
- 大切にしている価値観に気づく: ある出来事に対して強い感情が動くのは、あなたが何かを強く大切に思っているからです。何に感情が動いたのかを振り返ることで、自分にとって譲れない価値観が見えてくることがあります。
感情から学ぶことは、自分を責めるのではなく、感情を自己理解のためのツールとして活用する視点です。
日常生活で感情との向き合い方を実践するヒント
これらのステップを一度に全て実践しようとすると、負担に感じてしまうかもしれません。大切なのは、完璧を目指すのではなく、日常生活の中でできることから少しずつ取り入れていくことです。
- 小さな感情から練習する: 強い感情ではなく、日常生活で感じる小さなイライラやモヤモヤといった感情に気づく練習から始めてみましょう。
- 記録をつける: 感情に気づいた時に、どんな感情か、どんな状況で生まれたかなどを簡単にメモすることは、自分の感情パターンを知るのに役立ちます。
- 自分に優しく、継続する: 時には感情に振り回されてしまったり、自分を責めてしまったりすることもあるでしょう。そんな時も、落ち込みすぎず「まあ、こんな日もあるさ」と自分を許し、また次の機会に練習すれば良いのです。
まとめ:感情と上手に付き合い、自分らしい日々を
自分を責める癖を手放す旅は、自分自身の内面に目を向け、そこに生まれる感情の一つ一つを丁寧に扱うプロセスでもあります。ネガティブと感じる感情は、決して排除すべきものではなく、あなたの心の大切な一部です。
感情に気づき、受け止め、寄り添い、波をやり過ごし、そこから学ぶ。この一連の練習を通じて、あなたは感情に振り回されることなく、自分自身との健全な関係を築くことができるようになります。それは、たとえ大変な日常の中でも、自分を責めることなく、ありのままの自分を受け入れ、自己肯定感を育んでいく力となるでしょう。
焦る必要はありません。小さな一歩から、あなたの心の声に耳を傾けてみてください。その優しい気づきが、あなたを責めグセから解放し、心穏やかな日々へと導いてくれるはずです。